妊婦検診
妊婦健診で行う検査
妊娠すると、母体の健康や赤ちゃんの健やかな発育を知るためにいくつかの検査が行われます。とくに近年、医学の進歩と共に新しい検査が可能になり、妊婦さんにすすめられる検査も数多くなってきました。
次に示すのは、当院で基本的に行っている検査です。
妊娠初期 : 赤ちゃんにうつるような病気をお母さんが持っていないか、などを調べます。
〈検査項目〉 |
〈検査の目的〉 |
血液型 (Blood Type) |
母児間のRH血液型不適合の有無や分娩時の緊急輸血に備えて検査します。 |
B型肝炎 (Hepatitis B) |
分娩時に血液を介してお母さんから赤ちゃんに感染します。 ワクチンなどで感染予防が可能になりました。 |
C型肝炎 (Hepatitis C) |
B型肝炎のように血液を介して赤ちゃんに感染します。 感染を予防する方法はまだありません |
梅毒反応 (Syphilis) |
梅毒の病原体は胎盤を通って赤ちゃんに感染します。 赤ちゃんが先天性梅毒児として生まれないように治療が出来ます。 |
風疹抗体 (Rubella) |
お母さんが妊娠中に初めて感染すると、赤ちゃんが先天性風疹症となることがあります。ワクチンを接種したことのある方でも4-5%の人は風疹に対する抵抗力が不十分です。 |
エイズウイルス (HIV) |
分娩時に血液を介して赤ちゃんに感染することがあります。陽性でも薬を飲むことで、子宮内の赤ちゃんへの感染が防げることがわかってきました。 |
不規則抗体 (Blood Antibody) |
出産時の出血が非常に多いととても危険な状態になることがあります。 いかに早く出血に対応するかが大きな問題となりますが、この検査をしておくことにより輸血処置を迅速に行うことができるようになりました。 |
貧血 (Anemia) |
貧血があると早産や胎児発育遅延が起こることがあります。分娩時の出血に備えて治療をしておく必要があります。26・28・36週時にも検査します。 |
血糖値 (Blood Suga) |
糖尿病の素因をもっていないかどうかを調べます。 糖尿病があると赤ちゃんに先天的な異常を来すことがあります。 |
一般生化学検査 (Chemistry test) |
肝臓、腎臓などに機能異常がないかを調べます。 名古屋市妊婦検診公費負担に含まれない検査です。 |
子宮ガン検診 (Pap. Smear) |
子宮頚部がんの検診を行います。 |
妊娠中期 : 分娩に備えての検査です。
〈検査項目〉 |
〈検査の目的〉 |
成人T細胞白血病 ウイルス抗体 (HTLV-1) |
陽性者の中には約30年を過ぎてから成人T細胞白血病を発症する人がごく希にあります。血液や母乳を介して赤ちゃんに感染するので、母乳をあげないことで、母児感染を予防することが出来ます。 |
クラミジア抗原 (Chlamydia Trachomatis) |
分娩時に赤ちゃんに感染すると結膜炎、咽頭炎、肺炎などを起こします。分娩前に抗生剤で治療が可能です。 |
妊娠後期 : 分娩に備えての検査です。
〈検査項目〉 |
〈検査の目的〉 |
膣分泌物培養検査 (Strept. B Check) |
膣分泌物のなかに存在する菌のなかに、分娩時に赤ちゃんに感染してしまうものがあります。妊娠36週頃に検査をして陽性の方には分娩時に抗生物質を投与して感染の予防をします。 |
X線骨盤計測 (X-Ray Exam.) |
レントゲン撮影によりお母さんの骨盤の大きさを計測し、赤ちゃんが通れるだけの広さがあるかどうかを診断します。初産婦の方のみ行います。 |
妊娠全期間
〈検査項目〉 |
〈検査の目的〉 |
超音波検査 (Ultra Sound) |
毎回この検査を行います。 妊娠初期では、子宮の中に妊娠しているか、妊娠週数どおりに元気に発育しているか、多胎妊娠か、などを確認します。妊娠中期以降では、胎児発育、胎盤の位置、胎児奇形、羊水量などを確認します。妊婦健診補助券にはこの検査が含まれないことがあります。その場合検査料金として3000円が請求されることがあります。 |
MU外来
当院では、妊娠26週頃に助産師(Midwife)と超音波技師(Ultrasonographer)による妊婦健診を行っています。助産師による診察では、妊娠中の悩みやお困り事、分娩・産後・授乳などについての不安事などの相談をさせていただき、妊娠・分娩のサポートをさせていただきます。
超音波技師による診察では、20〜30分ほどの時間をかけて赤ちゃんをゆっくりと超音波検査で観察します。昼の特別枠での診療になりますので、ご主人・お子様もご一緒に超音波検査を観ることが出来ます。
妊娠関連乳がん検診
妊娠関連乳がんとは妊娠中または産後1年以内、あるいは授乳中に診断された乳がんのことです。
妊娠・授乳期は乳腺が大きくなるなどの変化が起きてしこりに気付きにくくなるため、いつのまにか進行していることがあります。
妊娠中や授乳中であっても積極的に乳がん検診を受けることが大切で乳がんの早期発見につながります。
乳腺が大きく変化してしまう前の妊娠初期(15週)までに行うことが重要です。
※検査は自動超音波検査(ABUS)で行います。
ママにも赤ちゃんにも影響のない安全な検査ですのでご安心いただけます。
さい帯血バンク妊婦検診
当院ではさい帯血バンクが可能です。
“さい帯血”とは、へその緒と胎盤に流れている赤ちゃんの血液のことです。
さい帯血の中には、身体のいろいろな部分を作り出す『もと』になる細胞がたくさん含まれており、現在では白血病をはじめとする血液の病気の治療に有効に利用されています。
これから生まれてくる大切なお子様が将来、血液の病気と診断された場合、本人のさい帯血が保管されていれば100%の適合率なので、早期に高い治療効果が得られることとなります。
また現在では、さい帯血の細胞を利用し、臓器・筋肉・血管などを再生させる研究も進められています。
大切なお子様のために臍帯血を保存することで、兄弟姉妹や家族のために使うことできる場合がございます。
分娩
『できる限りナチュラルに』を基本としています。元気な赤ちゃん、元気なお母さんであることはもちろん大切なことなので、どうしても必要と思われれば医療(陣痛促進、吸引分娩、鉗子分娩、帝王切開術など)を行います。
立ち会い分娩
当院では立ち会い分娩が可能です。ご主人やお子様の立ち会いをご希望の際はご相談ください。
立ち会い分娩についてあらかじめ知っておいて頂きたいことがあります。
立ち会い分娩とは、出産時の痛みを2人で分かち合って分娩に挑み、元気な赤ちゃんを「2人で協力して産む」ということです。このことにより、男性も出産を疑似体験することができ、父親としての自覚を持ち、妻を支える役割をより強固にすると考えられています。
しかし、男性は女性が思うほど強くはありません。時に、出産時の出血の多さに気を失ってしまう方がいらっしゃいます。
しかし、これは男性が本来持っている自己防衛本能なのです。大昔、男性は狩りや戦に行き大怪我をし、大量の出血を目の当たりにしました。その際、生き長らえるために心拍数を低下させ、意識を低下させると言う本能を身に付けたのです。この本能が、今でも男性の遺伝子の中に脈々と生き続けているのです。ですから、ご主人に無理に立ち会いを要求するようなことはせず、きちんと2人で相談してから決めましょう。
また、出産後に、嬉しさと感動のあまり興奮されて、周りの状況が分からなくなってしまうお父さんがいらっしゃいます。出産直後のお母さんや赤ちゃんが大変な状況でもそっちのけで、大きな声で携帯電話をしたり、カメラやビデオを撮り続けていたり。出産後2時間は、お母さんや赤ちゃんにとって、とても重要な時期です。生まれたばかりの赤ちゃんには、しっかりとした観察(循環・呼吸・体温など)が必要ですし、お母さんも出産後の出血の確認や処置が必要で、非常に大切な時期です。出産後、赤ちゃんは、臍の緒を切った後、すぐにお母さんに抱っこ(カンガルーケア)をしてもらいます。カンガルーケアをしながらの、3人のとても貴重で大切な時間。どうか、お母さんと赤ちゃんの状況を理解して頂き、2人を労り、ゆっくりと3人で会話して頂きたいと思います。
立ち会い分娩は、現代文明が作り上げた新しい分娩スタイルです。立ち会い分娩をする動物は、地球上で人類だけです。この方法が正しいかどうかは、恐らく千年、二千年と経過しないと分からないことなのでしょう。昔ながらの、ご主人が分娩室の扉の前や家の外で待ち、中から「オギャー」と赤ちゃんの声が聞こえてお父さんが喜ぶ、このようなスタイルも決して悪いものではありません。それぞれのご夫婦に合ったスタイルで出産に臨めるよう、妊娠中からよく話し合いをしておくことが大切です。
里帰り分娩
当院から他院への里帰り分娩:可能です。
他院より当院への里帰り分娩:可能です。
ただし、分娩予約が混み合う場合はお断りすることがありますので、お早めにご予約下さい。
無痛分娩
無痛分娩とは硬膜外麻酔を使用することにより分娩に伴う陣痛に伴う痛みを軽減する方法をいいます。世界的には無痛分娩はかなり普及した方法です(アメリカ73% フランス82% フィンランド89%)。日本の普及率はまだ6%程度ですが近年徐々に普及してきています。
硬膜外麻酔とは、背骨の中を通っている脊髄という太い神経の束の周囲に細いやわらかい管を入れ、そこに局所麻酔薬を注入して、脳へ陣痛の痛み信号が伝わらないようにする方法です。分娩進行に伴い子宮口がある程度開き、陣痛がしっかりとついてきた頃を見はからい、背中から硬膜外麻酔を行います。
薬が効いてくると陣痛の痛みが軽減します。(全く無くなるわけではありません。)また下半身がしびれてきて足を動かしにくくなります。背中から入れた管は細くてやわらかいので起きあがったり体を動かしたりする支障にはなりませんが、強くひっぱると抜けてしまうので注意が必要となります。
無痛分娩をすることによって発生する危険性もまたあります。
- 人間は「痛み」を感じることにより強い力を出すことができます。例えば間違えて熱いものを触ってしまった時のことを思い出してみましょう。触った瞬間急いで手を離しましたね。もし熱い(痛い)と感じなければそこまで早く手を動かすことはできないのです。
これと同じように、陣痛、つまり子宮の収縮の時に痛みを感じないとあまり力を出すことができなくなります。そもそも赤ちゃんを産み出す力(娩出力)とは子宮の収縮する力とお母さんが息む力が合わさった力のことを指します。このどちらかが欠けても赤ちゃんを産むことはできません。
もし分娩の途中でお母さんがうまく息むことができない場合は、赤ちゃんを引っ張り出す(吸引分娩・鉗子分娩)または帝王切開術が必要になることがあります。無痛分娩を行わない場合に比べ無痛分娩時の吸引分娩・鉗子分娩、帝王切開術となる割合は多少高いといわれています。
- 麻酔による主なまたは重大な合併症として以下のものがあります。血圧低下・上昇、不整脈、心停止、低酸素血症、薬剤の副作用(ショック、肝障害など)頭痛、腰痛、尿が出にくくなる、麻酔が効きすぎる、感染や血腫による神経麻痺、神経根の損傷によるしびれや痛みなど。これらの合併症はどれもきわめて希なことですが、ある確率で必ず起こりうるものでもあります。
分娩取扱実績に関する情報(2002年1月1日~2022年12月31日)
|
|
全分娩取扱数 |
4,055件 |
非無痛分娩件数 |
2,692件 |
無痛経腟分娩件 |
619件 |
帝王切開分娩件数 |
744件 |
帝王切開
通常の経膣分娩が困難、または危険と考えられる場合は帝王切開術により分娩を行います。骨盤位、瘢痕子宮などのためあらかじめ予定して行う場合と赤ちゃんの状態が悪くなった時などに行う緊急の場合があります。
当院での帝王切開率 = 16.9%
当院での緊急帝王切開率 = 5.4%
麻酔方法
脊髄麻酔と硬膜外麻酔を併用して行います。脊髄麻酔とは脊髄に直接麻酔薬を注入するため少量の麻酔薬で効果があり、虫垂炎や鼠径ヘルニアなどの手術などにも広く使われる麻酔方法です。硬膜外麻酔と併用することにより、注射針を細くすることが可能で、術後の副作用である頭痛をほぼなくすことができます。
硬膜外麻酔とは脊髄の周りにある空洞(硬膜外腔)にチューブを留置し術中から術後にかけて麻酔薬を随時注入することが可能で、術後の痛みを軽減するために使われます。いわゆる無痛分娩で行われる麻酔方法と同じです。
瘢痕子宮
以前に帝王切開術を受けたことがある場合、子宮に傷跡が残っています。その傷はきれいに治ってはいるのですが、陣痛が始まるとすさまじい子宮筋肉の収縮が起こるため、希にその部分から子宮が破裂してしまうことがあります。一般的にはその確率は400人に1人といわれています。
確率は低いように思われますが、もしその1人に当たった場合は死産となったり,子宮を取らなくてはならなくなったりすることがあります。そのため安全を考え、前もって帝王切開により分娩とするという考えが最近では主流となっています。
出生前診断(羊水検査・トリプルマーカー・新出生前診断)
遺伝子の出生前診断
お父さんとお母さんの遺伝子がそれぞれコピーされ、それらが合わさって新しい遺伝子となり、新しい個体となる。それが赤ちゃんです。その遺伝子がコピーされる段階で希にコピーミスが起こることがあります。これはまるで私たちが日常使っているコピー機と何ら変わらず、コピーを繰り返すうちにコピーミスを起こす率は高まっていきます。
遺伝子のコピーミスが起こったものとして有名な病気はダウン症です。また遺伝子のコピーミスは年齢とともにその確率が高まっていきます。ダウン症の年齢に対する発症率は下のとおりです。
この遺伝子のコピーミスがあるかどうかを前もって知ることはできないものか?と考え出された方法が羊水検査です。羊水検査とは、妊娠17週頃におなかに直接針を刺し、羊水を少しだけ(約20 ml)取りだし、その中に浮いている赤ちゃんの細胞を調べて、赤ちゃんの遺伝子に異常がないかを知る方法です。
しかし子宮に針を刺さなくてはならない故に危険性も発生します。約1/400の確率で流産を起こしたり、赤ちゃんの入っている袋である羊膜が傷つき、それが赤ちゃんに絡みつくことによって体の一部分が成長しない羊膜索症候群を引き起こすことが約1/1,000の確率であるといわれています。また自費診療であるため金額も10万円以上と非常に高額になります。
赤ちゃんに影響なくかつ安価に調べる方法はないものかと考え出された方法がトリプルマーカーという検査方法です。これはお母さんの血液の状態を調べることにより、赤ちゃんがどれほどの確率でダウン症になるかを知ることができる方法です。例えば35才の妊婦さんがこの検査をした場合、その結果は「年齢だけから判断すると1/299の確率ですが血液の状態を考慮すると1/○○の確率です。」などと回答されます。もちろんお母さんの血液検査ですから、検査が赤ちゃんに与える危険性は全くありません。また金額も15,000円程度です。しかし、あくまでも確率としてでしか結果は出ません。つまり白黒をはっきりつけることはできないわけです。この検査は妊娠15週から行うことができます。
平成25年4月から新出生前診断(NIPT)が行えるようになりました。これはお母さんの血液中に僅かに含まれる赤ちゃんの遺伝子を見つけることによりほぼ100%の確率でダウン症などを見つけます(見つけられないタイプのものが僅かですがあります)。リスクはありませんが、研究段階の検査であるため日本では決まった施設でしか検査を受けることができません。当院では名古屋市立大学病院での検査を勧めています。初診時に検査の予約を取り、2回目受診時に約30分ほどのカウンセリングをご夫婦で受けた後に採血を行い、約2週間後に3回目の受診をご夫婦でしていただき結果の報告がされます。
これらの検査は必ず受けなくてはならないものではありません。ご夫婦でよく考えて結論をお出しください。
平成25年4月から新出生前診断(NIPT)が行えるようになりました。これはお母さんの血液中に僅かに含まれる赤ちゃんの遺伝子を見つけることによりほぼ100%の確率でダウン症などを見つけます(見つけられないタイプのものが僅かですがあります)。リスクはありませんが、研究段階の検査であるため日本では決まった施設でしか検査を受けることができません。当院では名古屋市立大学病院での検査を勧めています。初診時に検査の予約を取り、2回目受診時に約30分ほどのカウンセリングをご夫婦で受けた後に採血を行い、約2週間後に3回目の受診をご夫婦でしていただき結果の報告がされます。
これらの検査は必ず受けなくてはならないものではありません。ご夫婦でよく考えて結論をお出しください。
男女産み分け法
赤ちゃんが男の子になるか女の子になるかは、夫婦生活の時期と排卵時期とに密接な関係があります。排卵時期になると膣の中のアルカリ性度が強くなるからです。これらの状況を見ながらタイミング法を実施していく方法を当院では行っています。およそ80%程度の成功率と言われています。その他に遠心分離法を使う方法もありますが当院ではこの方法は行っていません。産み分け法は保険診療の対象にはならず自費診療となるため、月に約1~2万円の診療費がかかります。より詳しいご説明をご希望の際は診察を受けて頂くこととなります。(注:当院では第1子に対する産み分け法は行っていません。)